2021年7月第1号

この五濁・五苦等は
六道に通じて受けて
未だ無き者はあらず。
常にこれに逼悩す。
解説
真宗聖典では214頁『教行信証』信巻に書かれているものです。
《六道に通じて受けて》とは、分かりやすくいうと「どんな生き方であっても」という読み方ができます。人間として生まれたからには悩み・苦しみを抱えて生きていくものです。
1つの悩みが解決したとて、また新しい悩みが生まれてくる。つまり、苦悩がなくなることはない。と述べられています。
この法語は人として生きることの難しさを現しているように読み取ることができます。それと同時に人間の”平等性”を表しているとも捉えることができると考えます。
その理由として、この世は却濁(病んでいる時代)、衆生濁(純真さが失われている)、見濁(他人を避難してしまう)、煩悩濁(人間不信)、命濁(人として生きる喜びが持てない)の五濁の時代、五濁悪時(ごだくあくじ)と言われています。
苦悩が生まれるのは、そんな世の中であるなら当然のことだと逆説的に考えることができます。
国や立場による対立、価値観が合わない人同士であったとしても、結局はみんな五濁悪時に生まれた同じ人間です。
そこに立ち返ることができれば、お互いの理解につながることも可能だと考えます。